2007年03月08日

「子供心と町の空」

No.7

・・・さて、ここからは我執とも言える世界に入るので文章も転調する。作者の勝手である。

カタヌキはまず簡単なところから始めるものだ。
動物の首のように細いところは後回し。
カタヌキ全体を左手の親指と人差し指で軽くつまみ、右手の爪先で少しずつ壊していく。
少しでも絵の部分が欠けてしまったらアウト。
金田は慎重に進める。作業中はほとんど息をしていないように感じるが、時々我にかえり深呼吸をする。

「ふぅー、ここまではなんとかなるんだけどなぁ。」

おおまかなところは抜くことができたが、首の細い所から先3分の1程度が残っている。
ここからが肝心である。首のまわりから崩していくと、頭のまわりを崩すときに首が折れてしまう。
頭からだ。そして最後に首のまわりを制覇するシナリオが金田には出来ていた。

完全に自分の世界に入り込んだ金田には、周りの音は聞こえていないかもしれない。
たかがカタヌキだが、彼にとっては人生を賭けたゲームでもあるのだ。ちょっと大げさか。

頭の回りは完全に抜いた。残るは一番細い首の部分。さてどうする。
金田は息をのみ、首が折れないように左手の親指と人差し指で軽く挟む。
いよいよ最大の難関であるその部分に指をかける。

(よし、いける!)

「おい!金田ぁ!」

背中から聞き覚えのある声がした。
びっくりした金田は思わず振り返った。

(カッちゃん!?)

その瞬間、指の間から妙な違和感のある感触が伝わった。

ペキ!


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この記事へのコメント
ベキ! で緊張感がゆるんで 思わず笑ってしまいました。
おもしろい 表現のことば とおもいます。
Posted by あかり at 2007年03月12日 14:22
あかりさんありがとうございます。
なかなか忙しくて投稿の間隔が空いてしまいます。
でも中止がしませんので気長にお待ちください。
Posted by 伝道師 at 2007年03月14日 22:12
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