2011年08月02日

「金田くんの冒険記」

No.30

「浩二?」

麗子は名前を呼んだきり、彼を見つめたまま呆然としている。
この人、浩二っていうんだ。
そんな2人を見た金田は、緊急時などということはまったく忘れ、またもやいらぬ妄想に走った。

行方不明になっていた彼と劇的な再開を果たしたお姉さんは、とても幸せな気持ちになっているんだろう。
ずっと会いたかったに違いない。
好きで好きでたまらない2人がやっとの思いで会うことができ、抑えていた気持ちがここで一気に解放されるのだ。
見つめ合う2人はなんてすばらしいんだ。
きっとここで抱きしめあうに違いない・・・。
映画みたいな場面だ。

★金田の妄想は続いた。
そしてお姉さんは彼のテープやロープを解き、唇にキスをして、次に抱きしめ合う。
彼は彼女に「愛してるよ・・・」と言い、さっと手を取り森に中を走り始める。
逃げた事がばれ、犯人が後ろから追ってくるが、女性の走りでは追いつかれることは必然。
覚悟した彼は、犯人と戦うことを決意するのだ。
そしていよいよ犯人との対決。
大柄な犯人は力も強く、彼は劣勢だ。
彼女は見ていることが出来ず、両手で目を覆い、絶望感に負けそうになり泣き続ける。
しかし、そんな彼女を見た彼は彼女を守りたい一心で、ぼろぼろになりながらも渾身の力を込めて犯人を倒す。
唇から血を流している彼をみて彼女は一言「愛してるわ・・・」と耳元でささやき、ふたたび彼は彼女の手を取り、颯爽と森を降り、逃げ切ることができた。
そして2人は結ばれて、幸せに暮らすのでした・・・。★

金田はとてもほんわかした気持ちになっていた。
よかったと心から思い、顔をあげ、麗子の顔を見て仰天。

「何よ、あんた。情けないわね!男でしょ。こんなもん一人で解いて逃げなさいよ!」
「もごもご・・・」←彼


タグ :小説物語

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