2010年05月28日

「金田くんの冒険記」

No.14

「そういえば、そうねぇ・・・。どこから匂ってくるのかしら。」
「きっと近くだよ。」

道幅が少し広がり、木々の隙間から小さな沼のようなものが見えてきた。

「あそこから匂ってくるんじゃないの?」
「あの湖が鬼竜沼よ、きっと・・・。やっと着いたわね。」
「よかったぁ、ねぇ、カッちゃん。」
「ああ、でもこの匂いってなんだ!?薬みたいだな。」
「そうだよね。ちょっと嫌な臭いだね。」

沼の周りは結構開けていて、車はすぐ近くに駐車する事ができた。
沼の辺は平らに均されており、砂利などが敷かれていたが、この状態に藤田の胸に不安がよぎった。

「なぁ、金田。ここって人工的に均されているみたいだぞ。車が入れるように。」
「ええ!?なんで?釣りに来るために?」
「そうじゃないだろう・・・。この匂いも変だし。水の色もおかしいぞ。」
「そういえば、そうだね。変な色・・・。」

沼の水は青や深緑とかいったものではなく、灰色に近く、泥水のようにどろどろしていた。
匂いはここから来ているのは明らかだった。

「おねえさん。本当にここが鬼竜沼なの?」
「地図を見る限り、ここのはずなんだけど・・・。何処かに目印が無いかしら。」
「普通は書いて無いんじゃない!?有名なところなら立て看板があるかもしれないけど。」
「それもそうね。ちょっと辺りを探してみるわ。彼の痕跡があるかも。」
「そうだね。その間に僕らも釣ってみようよ。カッちゃん。」
「おお、いっちょうやってやるか。」

麗子は沼の周りを探し始め、金田達は釣りの支度に取り掛かった。

「それにしても変な色だね。こんなところに魚がいるのかなぁ・・・。」
「ん~、こういう場所だから怪魚が住んでいるのかもしれないぞ。」
「そうか、なんかわくわくしてきたね。」

金田は意気揚々と竿を駆使し、ルアーを沼へ投げ込んだ。
ドボンという鈍い音がした。


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