2010年04月05日

「金田くんの冒険紀」

No.11

しまった・・・。
せっかく穏やかになっていたのに・・・。
金田はひどく後悔した。

「ご、ごめんなさい。おねえさん・・・。」
「私がそんな事する人間に見える?え?」
「い、いえ、そんな事ないです・・・。」
「ふん、せっかく車で連れて行ってやるって言ってるのよ。」
「わ、わかりました・・・。」

金田は思わず返事をしてしまった。

「おい、金田、大丈夫か?」
「あ、どうしよう・・・。」
「ねえ、藤田君。あんたが最初に一緒に行こうって言ったんだからね。あんたも一緒に行くのよ。」
「え?そりゃ言ったのは俺だけど、車で行くなんて思っていなかったんだよ。」
「じゃあ、いいわ!私があんたたちのご両親にお願いするから。」
「ええー!」

2人は意外な展開に驚いた。
そんなこと親に言われても反対されるに決まってるじゃないか・・・。
どうしよう。
断ってもこの人に怒られるし、黙って行ってバレたら親に怒られるし・・・。
でも噂の怪魚も見てみたいし、車なら早く行って早く帰れるかも。
金田の好奇心は藤田に勝るとも劣らないくらい強い。
それに変なところで自分を納得させ、後先を考えず決断する悪い癖もある。

「ぼ、ぼくはお姉さんの車で行くよ。」
「そうこなくっちゃ!」

麗子は藤田の方を見て

「あんたはどうするの?」

藤田は頭をぽりぽりかきながら、しぶしぶ了解した。
次の日、2人は親にはいつもの釣りと偽り、海岸縁の茂みに自転車を隠し、麗子の車で鬼竜沼へ向かった。


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