2009年10月14日

「子ども心と町の空」

No.96

母親に案内され病室へ向う途中、病院の廊下の雰囲気や匂い、独特の雰囲気が彼を不安にさせていた。
病室の前まで来ると、心臓の鼓動が高まるのがわかった。
なんて言って入ったらいいのか、神妙な顔でないといけないのか・・・どうしよう。
そう思いながらも中に入ると、病室は妙に明るく感じた。
中は意外に広く、ガラスか何かで仕切られた囲いの中に、優美子が寝ているのを見つけた。
寝ているのか?

「あ、よっちゃん!」

物音を感じた優美子は眼を開けて森山を呼んだ。
その声は病人のように弱々しいものではなく、いつもの元気な優美子の声だった。

「あ、優美子!」
「よっちゃん、来てくれたんだぁ。」
「そうだぞ。」

あ、やばい・・・。
思ったより元気そうな優美子を見て、いつもの調子で偉そうな返事をしてしまった森山は、ちょっと後悔した。

「なあ、なんでこんな仕切りの中にいるんだ?」
「・・・私の病気、ばい菌が入っちゃ駄目なんだって。」
「ふ~ん、そうなのか。でも元気そうでよかった。みんな心配してるんだぞ。」
「そうなの。ありがとう。みんなに元気だって伝えといてね。」
「ああ、わかった。」

仕切り越しでも話しは出来るようになっている。
どうゆう構造だろうかときょろきょろする森山を見て、優美子は笑っている。

「なんだよ、なにがおかしいんだよ。」
「よっちゃん、おかしい・・・。」
「ええ?そんなにおかしいか?」


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