2009年09月11日

「子ども心と町の空」

No.91

新学期の初日は午前中で授業は終わる。
新しい教科書をちゃんと鞄に入れる子、机の中にしまい込んで楽をしようとする男子など、生徒たちの行動は様々である。
森山はどちらかというと、やはり机の中にすべての教科書を詰め込んでいる。
金田はちゃんと鞄に入れて持ち帰るが、重くなるのでたまに愚痴をこぼすタイプである。

「今度の教科書結構厚いよね。」
「そうだなぁ、机の中に入りゃしないや。」
「え?よっちゃん。持って帰らないの?それに机の中一杯だし。」
「ちぇ、しょうがないなぁ。これだけ持って帰るか。」

机に入らない2冊程度をカバンに投げ込んだ。

「そうだ、今日は優美子んち寄って行くから。」
「あ、そうなんだ。大した事ないといいね。」
「スズキさんまでは一緒に行けるから寄って行こうぜ。」
「いいよ。」

金田は藤田も誘い、3人でスズキさんへ向かった。
学校から歩いて5分、次の角を曲がるとスズキさんの看板が見えて来るのだが、いつもはこの辺りでは聞いたことの無いような、猫に似た鳴き声が聞こえてきた。
こういった微妙な空気や雰囲気に反応するのはいつも藤田だ。

「あれ?猫がいるのかなぁ。・・・猫にしては変な鳴き声だな。」
「そう?猫だよ。かっちゃんはいろんな事に敏感なんだよね。」
「そうかな。・・・ま、いいか。」
「藤田の感は鋭いからな。虎が出てきたりして・・・」
「よっちゃんは鈍感過ぎるけどね。」

そんな会話で盛り上がりながらも、スズキさんの店先まで来た所で、3人は驚いた。
スズキさんのおばちゃんが赤ちゃんをあやしていた。

「お、おばちゃん、赤ちゃん産んだの!?」


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