2009年08月14日

「子ども心と町の空」

No.86

「なんか、軽く走れるぞ!ようし!」
「おりゃ!」

風のように走り、踏切り板を蹴る。
そして砂場へ着地した。

「ようし!決まった!」

彼はガッツポーズをした。
彼にとって、今までになく完璧なジャンプであり、快心の出来と思うほどの満足感があった。
計測されれればきっと大歓声が湧き上がるぞ。
うすら笑いすら浮かべながら、内心『勝った!』という思いと競技が終わったことで、計測する前にサイドへ帰ってしまった。

「やった、やったよ!よっちゃん。」
「はぁ?なにがやったんだよ。」
「え?」

はっと気がつくと、歓声どころかざわざわするだけで、すでに帰る人もいた。
なにか会場の雰囲気がおかしい。
大歓声が湧き起るはずなのに。
そして記録が読み上げられた。

「いまの記録は、3m65cmです。」

回りからはこんな言葉も聞こえてきた。

「ちぇ、なんだよ、大記録を見ようと思ったのに。」
「そうだよな。しらけちゃったよ。」

先生や夏木、内山、女子達もがっかりした、というよりも拍子ぬけした様子だ。

「ええ!?なんで?そんなはずはないよ。5mは超えてるはずだよ。ねえ内山くん!?」
「え!?い、いやぁ、ぜんぜん足りないと思うよ・・・。」
「そんなぁ・・・。」

金田も拍子抜けしてしまった。
大記録の期待は完全なしらけムードに変わってしまったのだった・・・。


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