2009年07月21日

「子ども心と町の空」

No.77

競技の順番は内山が5番目、西田は7番目、最後に金田となっている。
1順目の競技は終わり、誰も予選の記録を更新することなく2順目に入った。
依然としてどんよりしている空を見て、夏木も藤田と同じような違和感を感じていた。

「なあ、内山、やけにジメジメして暑いなぁ。」
「そう?風は無くなったみたいだけど。」
「熱くないか?それにこの雰囲気、何所かであったような気がするんだけどな。」
「ふ~ん、僕はなんにも感じないよ。気のせいだよ。マコトくん。」
「そうだよな。そういえばもうすぐだろ。2本目頑張れよ。」
「ん!思いっきりいくよ!金田君も頑張ろうね。」
「・・・」

内山は金田に声をかけたが、金田は黙ったきりボ~として砂場を見つめている。

「どうしたの?金田君?変だよさっきから。」
「ん?べつに・・。」
「次、僕の番だから行ってくるね。」
「ん?うん・・・。」

金田の様子が気になりながらも、全力を出し切って飛んだが、やはり記録の更新は出来なかった。
次は西田の番だが、北山小サイドはかなりピリピリしているようだ。

「おい、次に5m飛べなかったらビンタだからな。いいな西田!」
「・・・」
「わかったのか?あ?返事しろ!」
「・・・はい。」
「よし!いけ!」

西田は自己記録を更新出来ないもどかしさや、金田の妙な落ち着き様に、苛立ちが積もっていた。
だが、これが彼の実力を引き出した。

「ちくしょう、なんであんな奴があんなに飛ぶんだよ。俺の方がずっと上だ。絶対飛んでやる。」

彼は渾身の力を込めてジャンプした。
4m99cmを記録した。

しかし、金田はなにも反応しなかった。


同じカテゴリー(物語)の記事

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。