2008年05月11日

「子ども心と町の空」

No.55

中津先生の登場に2人はほっとした

「夏木、足を見せてみろ。・・・痛いか?」
「・・・かなり痛いです。」
「う~ん、ずいぶん腫れているな。よし、すぐに病院へ行くぞ。おぶって連れて行ってやるからな。」

そう言って、いとも軽々と背中に乗せて歩き出した。
藤田と金田は先生の後について行った。
2人は何か言わなきゃと思いながらも、足の速さにその暇もなかった。
しばらくして夏木は小さな声で先生に話しかけた。

「先生・・・。」
「なんだ夏木?なにか言ったか?」
「先生。この足じゃ大会に出られないよね。」
「そうだな・・・まあ仕方ないなぁ。大会はさておいてまずは足を治さないとな。」
「ごめんさない・・・。」
「なにも謝ることはないぞ。」
「でも・・・。」
「まあ、事情は後でゆっくりと聞くことにしよう。でも大事にならなくて良かったな。」

いつもと違ってやさしい声だった。
金田は夏木を見て泣いているのではと感じた。
頼りがいのある大きな先生の背中にうずくまっている姿を見て同じように涙がでそうになった。
いつも怒ってばかりで厳しい先生が、今は妙にやさしく思えた。
それに、きっとくやしいんだ。
夏木の分までやってやるぞと奮起した金田であった。


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